グローバル市場でのビジネス拡大を目指す企業にとって、海外(特に中国)の展示会への出展は絶好のチャンスです。しかし、効果的な出展には入念な準備と戦略的な判断が求められます。
そこで本記事では、海外の展示会に出展する際の準備期間、展示会選定方法、出展費用、そして基礎的な注意事項について、実践的かつ具体的に解説します。海外の展示会に出展を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
グローバル市場でのビジネス拡大を目指す企業にとって、海外(特に中国)の展示会への出展は絶好のチャンスです。しかし、効果的な出展には入念な準備と戦略的な判断が求められます。
そこで本記事では、海外の展示会に出展する際の準備期間、展示会選定方法、出展費用、そして基礎的な注意事項について、実践的かつ具体的に解説します。海外の展示会に出展を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
海外の展示会に出展することには様々なメリットがありますが、その中でも特に注目すべきメリットを3つ紹介します。
国内市場の成熟や人口減少が進む中、企業の持続的な成長には海外市場の開拓が不可欠です。海外の展示会は、世界中からその分野に特化した購買意欲の高いバイヤーや意思決定者が集まるため、新規顧客を獲得するための最も効率的な場の一つといえます。
日本国内での営業活動だけでは接触が難しい企業や、まだ取引のない国・地域のキーパーソンと直接対話し、具体的な商談を進めることが可能です。製品や技術をその場で実演し、魅力を直接伝えることで、言語や文化の壁を越えて深い理解を促し、信頼関係を構築できます。
これは、現地の販売代理店や長期的なビジネスパートナーを見つけるための重要な足がかりともなります。
海外の展示会は、現地の市場を肌で感じ、リアルな情報を収集するための絶好の機会です。来場者からの直接的なフィードバックは、自社製品がその市場でどのように受け止められるのか、どのように評価されているのかを具体的に把握するための貴重な情報となります。
また、世界中の競合他社が一堂に会するため、各社の新製品や技術動向、マーケティング戦略を間近で分析することも可能です。インターネットや文献調査だけでは得られない現地のニーズ、デザインのトレンド、規制などの「生の情報」は、製品の改良や新たな商品開発につながる重要なヒントとなります。
こうして得られた情報は、グローバル戦略を成功に導くための羅針盤となるでしょう。
その分野で権威のある海外の展示会に出展すること自体が、企業のブランド価値を国際的に高める強力なPR活動です。「グローバル市場に本気で取り組んでいる」という積極的な姿勢は、海外の顧客や潜在的なパートナーに対して大きな信頼性と安心感を与えます。
特に「メイド・イン・ジャパン」が持つ品質や技術力への高い評価を背景に、国際的な舞台で製品を直接アピールすることは、他国製品との明確な差別化につながります。
また、展示会は現地の業界メディアやインフルエンサーの注目を集める絶好の機会です。ブースのデザインやプレゼンテーション次第では、広告費以上の宣伝効果が期待でき、企業のグローバルな知名度を飛躍的に向上させることが可能です。
展示会は世界各国で開催されていますが、日本企業が海外の展示会に初めて挑戦するのであれば、まずは中国の展示会に出展することをおすすめします。その理由は、以下の通りです。
中国は日本から地理的に近く、多くの都市へ短時間で渡航できるため、担当者の身体的・時間的な負担を軽減できます。時差も1時間と少ないため、日本本社とのリアルタイムでの連携もスムーズです。
また、製品サンプルの輸送にかかる時間や費用も、欧米での出展に比べて抑えられる傾向にあります。初めての海外出展で発生しがちな不測の事態にも対応しやすく、コストを管理しやすい点は大きなメリットです。
中国は世界最大級の消費市場でありながら、高品質・高機能な日本製品に対する関心や信頼は依然として高く、初めての出展でも来場者から反応を得やすい土壌があります。地理的な近さから、中国国内だけでなく、他のアジア諸国からも多くのバイヤーが訪れるため、アジア市場全体へアピールできる絶好の機会です。
市場の反応を直接見るテストマーケティングの場として、初挑戦に最適な環境といえるでしょう。
中国では、世界最大規模の総合展示会から、特定の産業分野に特化した専門的な展示会まで、年間を通じて数多く開催されています。そのため、自社の規模や目的に合った、挑戦しやすい展示会を選びやすいのが特徴です。
また、ジェトロ(日本貿易振興機構)が「ジャパン・パビリオン」を設けるなど、日本の公的機関による出展サポートが充実している展示会も多く、手続きや情報収集の面で安心して臨むことができます。
海外展示会への出展を成功に導くためには、十分な準備期間を確保することが重要です。一般的な準備の流れと期間は、以下の通りです。
時期 | 準備項目 |
2年前〜8ヶ月前 | 出展計画の立案、展示会選定、社内承認取得、出展申込 |
8ヶ月〜6ヶ月前 | 出展ブースの企画・デザイン、現地パートナー・エージェントの選定、渡航・物流計画の立案 |
6ヶ月〜3ヶ月前 | 展示品・サンプルの準備、カタログやパンフレットの作成、出展スタッフの選定・指導、ビザ・宿泊・航空券の手配 |
3ヶ月〜1ヶ月前 | ブース設営計画の最終確認、現地でのネットワーキング計画、商談アポイントメントの調整、法規制・通関手続きの確認 |
1ヶ月前〜当日 | 荷物の発送、最終確認ミーティング、現地入り、ブース設営、本番運営 |
海外展示会ならではの手続きや準備が必要になることもあるため、計画的なスケジュール設定が非常に重要です。理想としては、出展を決定してから半年以上の準備期間を設けると余裕を持って対応できます。
世界を見渡すと、様々な規模や分野の展示会が頻繁に開催されています。その中から自社に合った適切な展示会を選定するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
まず「何のために出展するのか」という目的を具体的に設定することが重要です。例えば、新規顧客の獲得、パートナーシップの構築、ブランド認知度の向上、市場調査など目的は様々です。
その上で、各展示会の特性(業界・分野・来場者属性など)を比較検討します。目的と展示会の特性が合致して初めて、投資対効果の高い出展が実現できるため、初期段階で入念に擦り合わせることが展示会を成功に導くうえで重要です。
展示会を選定する際は、自社製品やサービスを届けたい顧客層(ターゲット)が、どの国や地域にいるのかを明確にします。そして、展示会がターゲットとする市場や商圏と一致しているかを確認することが不可欠です。
たとえ大規模で有名な展示会であっても、自社のターゲット顧客が集まらなければ意味がありません。開催国の市場だけでなく、周辺国からどのような来場者が見込まれるかといった、展示会の地理的な影響範囲も考慮して選定しましょう。
展示会の成功は、主催者の企画力や集客力に大きく左右されます。主催者の過去の実績、業界内での評判などを確認し、信頼できる組織かを見極めましょう。
また、その国の政府機関や有力な業界団体が協賛・後援している展示会は、一般的に信頼性が高く、質の高い来場者が集まる傾向にあります。第三者機関による出展者数や来場者数の調査データがあれば、より客観的な判断材料となります。
展示会の開催日程が、十分な準備期間を確保できるか、マーケティング計画と合致しているかなど、スケジュールを確認しておくことも重要です。特に、業界の商戦期や新製品の発表時期と連動させると、より大きなプロモーション効果を得られる可能性があります。
また、出展料、ブースの仕様、申し込み期限、支払い条件、キャンセル規定といった詳細な出展条件を必ず確認しましょう。製品の輸送や設営に関する規定、電気・水道などのインフラについても事前に把握し、予算内でスムーズな出展が可能か判断します。
最も信頼できる情報源の一つが、過去のデータです。主催者が公表している過去の開催報告書を確認し、来場者数、出展者数、参加企業の国籍構成などを分析します。
可能であれば、過去に出展したことのある企業に直接話を聞いたり、オンライン上のレビューや業界ニュースを検索したりするのも有効です。第三者の客観的な評価を参考にすることで、公式情報だけでは分からない展示会の実態や雰囲気を把握できます。
海外展示会出展には様々な費用が発生します。例えば、中国の展示会へ出展する場合、主な費用項目は以下の通りです。
費用項目 | 概要 |
出展料 | 展示会に出展するための費用。ブース面積(一般的に9㎡単位)や出展場所、装飾レベルに応じて費用が異なる。 |
ブース設営・装飾費 | ブースのデザインや装飾、設営にかかる費用。カスタムブースの場合、標準より高額になる。 |
展示品・サンプルの製作・輸送費 | 展示品やサンプルを製作・海外輸送するための費用。海外輸送の場合、梱包・保険・関税などを考慮する必要がある。 |
渡航・滞在費 | スタッフの航空券、ビザ申請料、現地交通費、宿泊費などの費用。 |
販促・広告費 | パンフレット、カタログ、ノベルティ、現地通訳や翻訳サービスなどの費用。 |
通信費 | 現地SIMカードやモバイルWi-Fiなどの費用。 |
その他 | 現地業者との打ち合わせ、展示会保険、緊急時の予備費など。 |
全体の目安として、1回の出展で最低でも100〜300万円程度の予算を想定しておくと安心です。規模や展示内容によっては、それ以上の費用がかかる場合もあります。
海外の展示会へ出展して成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
可能であれば、出展を検討している展示会を事前に視察することがおすすめです。実際に会場を訪れることで、来場者の層、競合他社の出展内容、ブースデザインのトレンド、会場全体の雰囲気などを肌で感じることができます。
これにより、自社が出展する際の具体的なイメージが湧き、より効果的な企画を立てられるようになるでしょう。パンフレットやWebサイトだけでは得られない「生の情報」は、初めての海外出展における失敗のリスクを大幅に減らしてくれます。
現地の商習慣、言語、文化、法規制などを熟知したパートナーや専門家の協力は、成功に不可欠です。ブースの設営会社、通訳、運営スタッフなどを現地で手配することで、輸送やコミュニケーションのトラブルを回避し、スムーズな準備が可能になります。
また、現地の市場に詳しいコンサルタントと連携すれば、ターゲットに響く効果的なプロモーション戦略や、商談を成功に導くためのアドバイスを受けることができます。これにより、出展効果を最大化することが可能です。
海外の展示会では、来場者は数多くのブースを短時間で見て回ります。そのため、多くの情報を詰め込むのではなく「誰に、何を伝えたいのか」という訴求ポイントを絞り込むことが重要です。
一目で事業内容が理解できるキャッチコピーや、最も見せたい製品を中心にしたシンプルなブース設計を心がけましょう。これにより、ターゲット顧客の足を止め、効率的にメッセージを伝え、質の高い商談へとつなげることができます。
展示会の会期中だけでなく、開催前から戦いは始まっています。自社のWebサイトやSNSでの出展告知はもちろん、主催者の公式サイトやメディアを活用して積極的に情報を発信しましょう。
特に、優先接触したいターゲット企業に対しては、事前にメールやダイレクトメッセージでアポイントを打診しておくことが極めて重要です。これにより、当日の時間を有効に使い、目的とする企業との商談機会を確実に確保することができます。
展示会で名刺交換をした見込み客へのフォローは、スピードが命です。関心が最も高まっている会期終了後24時間〜48時間以内に、個別のお礼メールを送るのが理想的です。
メールには、商談内容の要約や、依頼された資料の送付、次のアクション(見積もり提出、オンライン会議の提案など)を具体的に記載しましょう。迅速で丁寧な対応は、企業の信頼性を高め、数ある競合の中から自社を選んでもらうための決定的な一押しとなります。
海外の展示会に出展する際は、海外ならではの注意事項が存在します。具体的には、以下の点に注意しましょう。
展示品の輸送には「カルネ」と呼ばれる通関手帳を利用するのが一般的ですが、国によっては対象外の品目があるため事前の確認が必須です。また、ブース内で配布するノベルティや食品に関する規制、電気工事の安全基準、個人情報の取り扱い、知的財産権の保護など、国ごとに異なる法令が存在します。
これらを遵守しないと、最悪の場合、展示品が差し押さえられたり、出展が中止になったりする可能性があります。主催者や現地の代行業者に必ず確認しましょう。
海外の展示会に出展する際は、言語の違いによるコミュニケーションの障壁だけでなく、独自の商習慣や文化の違いが存在します。また、宗教上のタブー(特定の色や数字など)にも配慮し、誤解を招くデザインや表現は避けなければなりません。
そのため、製品知識が豊富で、かつ現地の商習慣や文化にも精通した優秀な通訳やコーディネーターを手配することが重要です。現地に赴くスタッフにも事前に教育をして、トラブル防止に努めましょう。相手の文化を尊重する姿勢が、信頼関係の構築につながります。
多くの人が集まる展示会場では、置き引きやスリ、展示品の盗難が頻繁に発生します。ノートパソコンやスマートフォン、パスポートなどの貴重品は常に身につけ、ブースを無人にする時間をなくすよう、スタッフのシフトを組みましょう。
特に、発表前の新製品や技術情報が入ったデバイスは厳重な管理が必要です。また、開催国の治安情報を事前に確認し、会場外での行動も含め、スタッフ全員の安全意識を高めておくことが重要です。
来場者の母国語に合わせて、英語だけでなく現地の公用語や周辺国の言語に対応した資料を用意すると、より深く製品を理解してもらえます。名刺は、片面に日本語、もう片面に英語や現地語を併記するのが一般的です。
その際、機械翻訳に頼るのではなく、専門の翻訳会社に依頼し、自然で正確な表現を心がけましょう。製品カタログやパネルなども、専門用語が正しく伝わるよう、質の高い翻訳を準備しておくことが不可欠です。
海外展示会への出展は、多くの準備と投資を必要としますが、その分大きなビジネスチャンスと成長の可能性を秘めています。十分な計画と正しい選択、現地ニーズへの柔軟な対応が、成功への鍵となるでしょう。
出展を検討している展示会には、可能であれば一度事前に足を運び、会場の様子や国内外の企業の出展方法などを視察しておくと安心です。また、出展している日本企業にアドバイスを求めることもおすすめです。
本記事で紹介した注意点やポイントを押さえ、万全の態勢で海外展示会へ出展し、新たなビジネスチャンスをつかんでください。
この記事の執筆者
代表取締役
三溝 拓
名古屋ショーケース(現:エヌショーケース)営業開発部部長を経て、代表取締役に就任。これまで多くの展示会や企業イベント、式典などを成功に導き、常にお客様から求め続けられる価値を提供するために尽力している。