訪日外国人観光客の数は年々増加しており、観光庁は2030年の目標として、6,000万人の誘客を掲げています。この大きなビジネスチャンスを活かすために、多くの企業がインバウンド向けのポップアップストアを展開しています。
しかし、単にポップアップストアを出店するだけでは、思うような成果は得られません。ターゲット層の属性に合わせた場所選びと商品選定が、成功の鍵を握ります。どの国からの観光客をターゲットにするのか、どのような目的で日本を訪れているのかによって、最適な戦略は大きく変わってくるのです。
本記事では、インバウンド顧客に特化したポップアップストアの戦略を5つのコンセプトに分けてご紹介します。それぞれのターゲット層に最適な出店場所と販売商品の組み合わせを詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
インバウンド向けポップアップストアが注目される理由
近年、インバウンド向けのポップアップストアが急速に増加しています。その背景には、訪日外国人観光客の消費行動の変化があります。
従来は団体旅行で決められたルートを回る観光客が多かったのに対し、最近では個人旅行で自分の興味に合わせた体験を求める傾向が強まっています。日本でしか買えない限定商品や、日本の文化を体験できる場所を積極的に探す観光客が増えているのです。
ポップアップストアは、期間限定という特性から話題性が高く、SNSでの拡散も期待できます。特にアジア圏からの観光客は、訪日前にSNSで情報収集を行い、話題のスポットを訪れる傾向が強いため、ポップアップストアとの相性が非常に良いといえます。
また、常設店舗を構えるよりもコストを抑えられるため、テストマーケティングとしても活用できる点も魅力です。ターゲット層の反応を見ながら、商品ラインナップや販売戦略を柔軟に調整できます。
インバウンド向けポップアップストア5つの販売戦略
インバウンド顧客向けのポップアップストアを成功させるには、ターゲット層の属性とニーズを正確に把握することが重要です。ここでは、5つの異なるコンセプトに基づいた戦略をご紹介します。
コア・サブカル特化型
日本のアニメ、ゲーム、特撮などのサブカルチャーは、世界中に熱狂的なファンを持っています。このコンセプトは、そうしたコアなファン層をターゲットにした戦略です。
販売商品
- 日本アニメの限定フィギュアやガレージキット
- 人気ゲームのコラボグッズ
- 特撮ヒーローのヴィンテージトイ
- 限定版のマンガやアートブック
最適な出店場所
秋葉原ラジオ会館や秋葉原UDXが最適です。費用目安は1日あたり30万円から80万円程度と高めですが、既存の店舗では手に入らない限定品のプレミア感で、高い客単価と即時購買を誘発できます。
ターゲット層と期待効果
アジア圏や欧米豪の熱狂的なアニメ・サブカルチャーファンがターゲットです。口コミやSNSでの拡散による話題性も最大級で、イベント終了後も長期的なブランド認知につながります。
トレンド・Z世代発信型
流行に敏感な若年層をターゲットにしたコンセプトです。日本の最新トレンドを発信する場として機能させることで、高い集客効果が期待できます。
販売商品
日本発の最新ファッション雑貨、トレンドのコスメ、ストリートブランドの限定Tシャツや小物、レトロなデザインの日本のお菓子などが適しています。パッケージのビジュアルを重視した商品選定が重要です。
最適な出店場所
渋谷PARCO 1階・地下1階、または原宿竹下通り周辺が最適です。費用目安は1日あたり30万円から100万円程度となります。
ターゲット層と期待効果
流行に敏感なアジア・欧米の若年層、特にZ世代がメインターゲットです。体験型の展示や写真映えする内装で来店動機を高め、SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)を大量に獲得できます。「今、日本のトレンドの最先端」という印象を与えることで、ブランド価値を高められます。
和モダン・高感度型
伝統技術を現代的にアレンジした高品質な商品を求める富裕層向けのコンセプトです。価格よりも品質とデザインを重視する成熟した層にアプローチできます。
販売商品
- 伝統技術を活かしたモダンな工芸品(切子グラス、漆器など)
- 高品質な日本酒や茶器
- クリエイターによるアート性の高い限定雑貨
- 職人技が光る日用品
最適な出店場所
銀座GINZA SIX周辺のギャラリーや、表参道エリアの路面店が適しています。費用目安は1日あたり25万円から50万円程度です。
ターゲット層と期待効果
欧米豪やアジアの富裕層、品質とデザインを重視する成熟した層がターゲットです。訪日記念の高単価な逸品を求める層に直接リーチでき、高い売上だけでなくブランド価値の向上にもつながります。日本の職人技術とブランドの信頼性を伝えることで、リピーター獲得も期待できます。
お土産・旅の駆け込み消費型
帰国直前の旅行客をターゲットにした、実用性重視のコンセプトです。「買い忘れ」や「最後の記念」を求める心理を捉えることで、短時間で効率的な販売が可能です。
販売商品
パッケージがユニークなご当地お菓子、機能性のあるトラベルグッズ、地域限定のキャラクターグッズ、短期間で消費できる実用的な日本雑貨などが適しています。
最適な出店場所
東京駅一番街のエキナカスペースや、羽田空港・成田空港の催事スペースが最適です。費用目安は1日あたり20万円から50万円程度となります。
ターゲット層と期待効果
帰国直前の幅広い層の旅行客がターゲットです。短時間で大量のトラフィックに対して販売できるため、販売効率が非常に高いのが特徴です。免税対応や多言語決済の利便性が非常に重要となります。
ディープジャパン・体験型
日本の歴史や文化に強い関心を持つ観光客向けのコンセプトです。「日本らしい」体験と買い物を結びつけることで、滞在時間を延長し、満足度を高められます。
販売商品
浮世絵関連グッズ、和柄をテーマにしたフィギュア、伝統的な食品(抹茶、出汁など)、着物・浴衣体験サービスなどが適しています。
最適な出店場所
浅草まるごと館周辺や東京ソラマチの和風フロア周辺が最適です。費用目安は1日あたり10万円から40万円程度です。
ターゲット層と期待効果
日本の歴史・文化に強い関心を持つ一般観光客、およびインバウンドファミリー層がターゲットです。特にスカイツリー(ソラマチ)は多様な国籍の観光客を集めるため、日本の一般的なお土産として広く認知を拡大できます。体験と購買を組み合わせることで、単なる買い物以上の価値を提供できます。
インバウンド向けポップアップストアを成功させるポイント
効果的なインバウンド向けポップアップストアを実現するには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、成功のための3つの鍵をご紹介します。
ターゲット層のニーズを徹底的に把握する
まず重要なのは、ターゲット層を明確にし、そのニーズを深く理解することです。「海外からの観光客」という漠然とした設定ではなく、国籍、年齢層、旅行の目的などを具体的に絞り込みましょう。
例えば、台湾からの観光客と欧米からの観光客では、求めるものが大きく異なります。台湾からの観光客は日本のポップカルチャーや最新トレンドに興味を持つ傾向が強く、欧米からの観光客は伝統文化や職人技に魅力を感じる傾向があります。
SNSや口コミサイトを分析し、ターゲット層が日本旅行で何を求めているのかを調査することが重要です。
多言語対応と視覚的な情報提供
言葉の壁を解消することは、インバウンド対応の基本です。商品説明やPOPは、ターゲット層の言語で用意しましょう。ただし、文字情報だけでは限界があるため、写真や図解を多用した視覚的にわかりやすい情報提供も重要です。
また、QRコードを活用して多言語の詳細情報にアクセスできるようにすると、限られたスペースでも充実した情報提供が可能になります。キャッシュレス決済への対応も必須です。
SNSでの事前告知と拡散施策
ポップアップストアの成功には、事前の情報発信が欠かせません。開催の1か月前からSNSで告知を始め、ターゲット層がよく利用するプラットフォームで積極的に情報を発信しましょう。
InstagramやX(旧Twitter)では、写真映えするビジュアルを用意し、ハッシュタグを効果的に活用します。中国からの観光客をターゲットにする場合は、WeChatやWeiboでの情報発信も検討しましょう。
来場者がSNSでシェアしたくなるような仕掛けを用意することも重要です。フォトスポットの設置や、限定商品の情報など、話題性のあるコンテンツを提供しましょう。
ポップアップストアの出店はエヌショーケースにお任せください
エヌショーケース株式会社では、創業55年を超える豊富な実績を活かし、ポップアップストアの企画・運営をトータルサポートしています。会場選定、ブースデザイン、装飾品の制作、当日の運営サポートまで、ワンストップでご提供いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
ご相談・お問い合わせはこちら
よくある質問
Q. インバウンド向けポップアップストアの出店費用はどのくらいかかりますか
A. 出店場所や期間、規模によって大きく異なりますが、1日あたり10万円から100万円程度が目安となります。秋葉原や渋谷などの人気エリアは費用が高めですが、その分集客力も期待できます。空港や駅などの交通拠点は中程度の費用で、効率的な販売が可能です。予算に応じて最適な場所を選定することが重要です。
Q. どのような商品が売れやすいですか
A. ターゲット層によって大きく異なります。若年層向けにはトレンド性の高い雑貨やコスメ、成熟した層向けには伝統工芸品や高品質な食品などが人気です。共通して重要なのは、「日本でしか買えない」という限定性です。パッケージデザインにもこだわり、SNS映えする商品を選ぶと効果的です。
Q. 多言語対応はどこまで必要ですか
A. 最低限、英語と中国語(簡体字・繁体字)への対応は必須です。ターゲット層に韓国人や東南アジアからの観光客が多い場合は、それぞれの言語にも対応すると良いでしょう。ただし、すべての情報を多言語化するのは現実的ではないため、重要な商品説明や価格、支払い方法などを優先的に翻訳しましょう。
Q. 開催期間はどのくらいが適切ですか
A. 一般的には1週間から2週間程度が適切です。短すぎると話題が広がる前に終了してしまい、長すぎると限定感が薄れてしまいます。ただし、イベントの目的やターゲット層によって最適な期間は異なります。空港など帰国直前の観光客をターゲットにする場合は、より長期の開催も効果的です。
Q. 効果測定はどのように行えばよいですか
A. 売上金額だけでなく、来場者数、SNSでの言及数、アンケート回答などを総合的に評価しましょう。特にインバウンド向けの場合は、国籍別の来場者数や購買傾向を分析することで、次回以降の戦略に活かせます。QRコードを活用してアンケートを実施すると、詳細なデータ収集が可能です。
インバウンド需要を捉えたポップアップストアで成功を
インバウンド向けのポップアップストアは、ターゲット層に合わせた戦略的な場所選びと商品選定が成功の鍵となります。サブカルチャーに特化するのか、伝統文化を打ち出すのか、トレンドを重視するのか、明確なコンセプトを持つことが重要です。
本記事でご紹介した5つの販売戦略を参考に、自社の商品やサービスに最適なアプローチを検討してみてください。事前のターゲット分析、多言語対応、SNSでの情報発信など、基本を押さえることで、効果的なポップアップストアを実現できます。
エヌショーケース株式会社では、インバウンド向けポップアップストアの企画から運営まで、豊富な経験とノウハウでサポートいたします。初めての出店でも安心してお任せいただけますので、ぜひお気軽にご相談ください。
ご相談・お見積りはこちら